「ダビデはますます強くなり…」 Ⅱサムエル2章1節〜3章1節

<前回までのあらすじ>前回一人のアマレク人が、ダビデにサウル王の死を告げました。しかも彼は、サウルに頼まれたので自分が止めを刺したと言ったのです。きっと、それを聞いて、ダビデは喜ぶと思ったのでしょう。しかし違いました。ダビデは、それを聞いて、衣を裂いて悲しみました。そして「サウルもヨナタンも、愛される、りっぱな人だった」と彼らの偉業をたたえたのです。その箇所から私たちは、自分を迫害する者への報いは、主にお任せし、自分としては迫害する人にも、憐れみ深くあることを学びました。

そして今日の箇所で、ダビデはいよいよイスラエルに帰還(きかん)を果たします。しかしサウル王が倒れたからといって、いきなりダビデが、全イスラエルの王になったわけではありません。ダビデは、まずイスラエル12部族の中でも、一番南に位置する、自分の出身部族でもあるユダ族の王となったのです。またダビデは、決して自分が王になったことで有頂天になることはありませんでした。彼はサウルの遺体を、勇気を持って奪い返し、丁重に葬ったヤベシュ・ギルアデの人々への心遣いも忘れませんでした。ダビデは、彼らの勇気を賞賛し、祝福しました。◆今日の箇所で、特に注目するべきなのは、ダビデがすべてのことを主に伺って、決めているという点です。彼が最初に政権の基盤を据えたのは「ヘブロン」でした。主が、そう仰せられたからです(1)。このヘブロンは、信仰の父アブラハムが、約束の地カナンで最初に手に入れた土地でもありました。愛する妻サラが召された時、そこに土地を買って葬ったのです。ダビデも、紆余曲折ある中で、ひたすら主に従い続けて、ついに「王となる」という約束の実現を見たのが、このヘブロンの地だったのです。

しかしダビデが王になったとはいえ、イスラエル国内は、まだまだ内戦状態でした。サウルの将軍であったアブネルは、サウルの子孫の生き残りイシュ・ボシェテをかつぎ出して、ユダ族を除く全イスラエルの王としました(実際はアブネルが権力を握っていたのでしょう)。また、その場所はマハナイムという、ヨルダン川の東側でしたが、地中海側に陣を構えるペリシテ人の勢力が、そこまで迫っていたということでしょう。まさに「内憂外患(ないゆうがいかん)」、内にも外にも問題山積でした。◆軍も感情のままに暴走していました。敵の将軍アブネルに挑発されるまま、ダビデの将軍ヨアブも、若い者たち12人を選び「たいまん(一対一の決闘)」をはらせ、双方に犠牲が出ました(16)。戦いはコントロール不能となり、ヨアブの弟のアサエルは、アブネルを深追いし、逆に殺されてしまいました(23)。戦いは確かにダビデのユダ軍が優勢に終わりましたが(31)、そのような多くの血が流されることはダビデの本望ではありませんでしたし、主の御心でもありませんでした。

時代は混沌(こんとん)とし、サウルの家とダビデの家との間には、長く戦いが続きました。しかし聖書にはこうあります。「ダビデはますます強くなり、サウルの家はますます弱くなった。(3:1)」その過程にあっては、どうなるか分かりませんでした。圧倒的にダビデが不利に見えた時もありましたし、ピンチの中でこのままサウルにやられてしまうのではないかと思える時もありました。しかし長い目で見た時に、確実にダビデは強くなり、サウルの家は弱くなっていったのです。それはダビデが、主の御心に従っていたからです。◆私たちはどうでしょうか?その過程にあっては「勝ち組や負け組」「得や損」のように思えることがあるかもしれません。でも長い目で見た時、祝福されるのは、主の御心に従った者なのです。近視眼的になり、自分の感情のままに暴走してしまうことなく、本当の祝福を手に入れることができますように。