『ヘテ人ウリヤも戦死した。』 Ⅱサムエル11章6−17節

<前回までのあらすじ>前回は「ダビデの油断」と題して学びました。アモンとの戦いの際、なぜかダビデは夕暮れまで王宮で寝ていました。そして夕涼みに出たところ、一人の女性が水浴びをしているのが見えました。しかも彼女は非常に美しかった。ダビデが彼女について調べると、彼女は自分の部下で、今まさに戦いに出ているヘテ人ウリヤの妻だとわかりました。しかしダビデは自分の気持ちを抑えられず、彼女と寝てしまいました。前回の最後にはこうありました「私はみごもりました。」

バテシェバの懐妊の知らせを受け、ダビデは隠蔽工作に奔走します。彼は早速ウリヤを戦場から呼び寄せ、戦況を尋ねました。でも目的はそこにはあらず、一刻も早くウリヤを家に返し、妊娠のアリバイ作りをすることでした。ダビデは言いました「家に帰って、あなたの足を洗いなさい」。しかしウリヤは家に帰らず、王宮の門で家来たちと共に眠りました。翌朝、その理由をこう説明しました。「神の箱も…主人(ダビデ)の家来たちも戦場で野営しています。それなのに、私だけが家に帰り…妻と寝ることができましょうか。…私は決してそのようなことをいたしません。」◆感動的な自分の部下の言葉です。しかしダビデはハッと我に返るどころか、さらに罪に罪を重ねます。ウリヤに酒を飲ませ、酔っ払わせた上で、彼を家に返そうとしたのです。何という欺きでしょう!しかしウリヤはそれでも家に帰らず、前日同様、他の家来たちと一緒に寝ました。翌朝ダビデはヨアブに手紙を書きました。内容は「ウリヤを激戦の真っ正面に出し、彼を残してあなたがたは退き、彼が打たれて死ぬようにせよ」。しかもダビデはその手紙をウリヤに持たせたのです。あまりにも卑劣で、ウリヤが可哀想すぎます。そしてヨアブは、その手紙を受け取り、書かれている通りに粛々と行いました。ヨアブが、ダビデの弱みを握った瞬間でした。

結果は「ヘテ人ウリヤも戦死した」の一言で片付けられています。淡々とした表現が、命がけで忠誠を尽くしながらも、その王によって命を奪われてしまったウリヤの無念を物語っているかのようです。今回だけではなく、彼は今までの人生、ずっと忠誠を尽くしてきました。23章39節には、ダビデの勇士37人のリストがあり、そこにウリヤの名も入っています。だからこそ信頼され、王宮のすぐ近くに住むことも許されたのです。しかしダビデは、ウリヤの忠誠を利用し、あたかも虫けらのように殺したのです。◆ダビデは自分の目的を達成しました。「完璧な偽装殺人」のつもりでした。ここまであっという間です。ダビデともあろう信仰の人が、坂を転げ落ちるように、嘘を嘘で塗り固め、殺人まで犯してしまったのです。最初はちょっとした出来心だったかもしれません。でも自分の感情にブレーキをかけず、神様の前で悔い改めず、方向転換しないと、やがて悔い改める機会まで失い、落ちるところまで落ちて、ついには死(あらゆる関係と人生の破綻)に至ってしまうのです。

あなたは大丈夫でしょうか?あなたが守ろうとしているのは何でしょう?自分のプライドですか?人からどう思われるかでしょうか?でも私たちには、もっと守らなければいけないものがあります。それは「神様との生きた関係(いのち)」です。それは、悔い改めによって与えられます。「もし私たちが自分の罪を言い表すなら、神は真実で正しい方ですから、その罪を赦し、すべての悪から私たちをきよめてくださいます(Ⅰヨハネ1:9)」。隠すのではなく、正直になって告白することができますように。それだけが、この不気味な、罪と死の力に、打ち勝つ唯一の方法なのです。